意思決定支援-非がん疾患のエンド・オブ・ライフケア(EOLC)に関するエビデンス-

非がん疾患のEOLCに関するエビデンスは意外に乏しい。 特に、その医療行為を行うべきか行わざるべきかについてのエビデンスは乏しいと言える。ただし、透析についてのエビデンスは比較的豊富である。例えば、ガイドライン[1]の推奨文には、こう記載されている。 腎疾患末期の人の維持透析の中止については、アウトカム指標を用いた報告で、死の質を高める可能性が示されている。日本透析医学会の提言における「透析見合わせについて検討する状態」に該当し、共同意思決定及びACPのプロセスを経て、本人の意思に基づき人工透析を中止する場合は、これを推奨ないしは提案する。 この記載に注目すべき点が2つある。1点目は、ガイドライン作成委員の間でも、推奨と提案が割れているのである。意見が割れて当然の話題なのである。2点目は、ガイドラインの解説文にある以下の記載にある。そこには、こう書かれている。・・ただし、この推奨あるいは提案は、「透析の見合わせについて検討する状態」になく、本人が透析終了を希望する場合の、透析終了を否定するものではない。 ブログの読者の皆さんは、この意味がわかるだろうか。「透析の見合わせについて検討する状態」≒医療行為が無益にあたる状態、と解釈した場合、本人の意思にそっており、その医療行為が無益であるならば、その医療行為を中止することは、推奨ないし提案できるのだが、本人の意思にそっていれば、医療行為が無益とは言えない場合でさえ、その医療行為の中止を否定しないと述べているのである。何しろ、本人が望まない医…

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日本食は健康に良いのでしょうか?パートⅧ

複数回に渡って日本食パターンの有効性について紹介してきました。今回も前回に続いて日本食パターンの食習慣が改善することのメリットを紹介したいと思います。 Matsuyamaらは、日本食の遵守の変化と機能障害発生リスクの低下との関連性を調査しました。1994年と2006年に大崎市に住む地域在住の65歳以上の高齢者2,923人を対象にしました。日本食の遵守はJapanese Diet Index (JDI)9を用いて評価しました。JDI 9の変化をもとに「大幅な減少」、「中程度の減少」、「変化なし」、「中程度の増加」、「大幅な増加」の5つのグループに分類しました。参加者のうち1,093例に機能障害が発症しました。機能障害発生は、JDI9が大幅に減少した場合に対して大幅に増加した場合のハザード比(95%信頼区間)は0.77 (0.61-0.98)でした。著者らは日本食の遵守増加は機能障害の発生リスクの有意な低下と関連していたと結論づけていました。 Matsuyama S, Zhang S, Tomata Y, Abe S, Tanji F, Sugawara Y, Tsuji I. Association between improved adherence to the Japanese diet and incident functional disability in older people: The Ohsaki Cohort 2006 Study. Clin Nutr. 2020 Ju…

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高齢者のうつの特徴

日本は、ほかの海外諸国と比べて、高齢の方々の自殺率が高いことが特徴です。高齢者の方々のうつの社会的特徴として、男女共通で「体力に対する自己評価の低さや親友の少なさ」があげられています。 また、男性のうつの特徴として、「心臓などの循環器疾患」を持っていること。女性は「喫煙することや外出が少ないこと、ストレスな出来事をよく思い出したり、問題を回避する性格」が、それぞれ自殺につながるリスクとして挙げられています。 喫煙は、循環器疾患の有意なリスクです。朗らかな生活を送るためにも、生活として喫煙をせず、話し合える友人を持ち、自己評価を高く、明るく生活していくことが大事です。 【参考文献】出村慎一ほか:地方都市在住の在宅高齢者における抑うつと生活要因との関係.日生理人類会誌 2003:8:45-49田中美加ほか:地域高齢者の睡眠と抑うつとの関連における性差.日公衛誌 2012:59:239-250Nolen-Hoeksema S and Alado A:Gender and age diffences in emotion regulation strategies and their relationship to depressive symptoms. Personal Individ Differ 2011:51:704-708 ホームページ国立長寿医療センター老年内科HP 1国立長寿医療センター老年内科HP 2

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加齢と肝臓・胆道の機能③

胆石症の有病率は年齢とともに増加します。加齢に伴う胆汁中のコレステロール分泌量の増加と、胆汁酸分泌量の減少とが相まって、コレステロール飽和度が上昇し、その結果、胆石形成が増加します。 胆石症は、男性よりも女性の方が2倍多いとの報告があります。無症状であることも多く、無関係な理由で行われた腹部の放射線検査で発見されることが多いです。胆石は閉塞を起こし胆嚢炎の原因となります。 胆嚢の機能は高齢になると変化するかどうかは明らかではありません。それは、利用できるデータの多くは65歳以下の被験者から得られているからです。高齢者で胆嚢の機能が障害されていることを示す研究もあります。 35歳以上では空腹時および食後の胆嚢容量が増加します。一方、高齢者では食後の胆嚢収縮が不十分であることが観察されています。胆嚢容量増加は胆石症と相関があります。高齢女性は男性と比べて胆嚢収縮能が低下している可能性があります。 加齢による胆嚢炎のリスクの増加は見られないが、高齢者では他の合併症が多いため、罹患率や死亡率が高くなる傾向にあります。 ホームページ国立長寿医療センター老年内科HP 1国立長寿医療センター老年内科HP 2

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コロナ禍における食生活変化

コロナウイルスの蔓延を抑制するため、さまざまな社会的交流制限が行われるようになり私たちの日常生活は一変してしまいました。わが国でも、緊急事態宣言が幾度か発出され、その都度コロナウイルス感染者は減少するものの、宣言に伴う社会的交流制限が、高齢者の活動時間の低下1)やフレイルの増加2)をもたらすことが問題となっています。このような社会的交流制限下において、フレイル状態と食生活変化の関連性を調べるため、私たちは第1回目の緊急事態宣言解除時に、介護認定を受けていない地域在住後期高齢者4436名を対象としてアンケート調査を実施しました3)。この調査では、簡易フレイルインデックスに基づくフレイル評価と、緊急事態宣言下における12品目の食事摂取変化を尋ねました。緊急事態宣言前に比べ、各品目の摂取が、増加、不変、減少のいずれであったかを自己評価してもらい、1種でも増・減した場合を食生活変化ありとしました。有効回答者は2738名で、フレイルと評価された高齢者は470名(17.2%)、食生活に変化があったと回答した人は1097名(40.1%)でした。フレイル高齢者が多かった食生活変化は、肉、魚、海藻類、きのこ類、果物の減少と、卵、パン、麺の増加でした。そして、食生活変化があったことに対するフレイルの影響は、年齢、性別、BMI、独居を調整しても、そのオッズ比は2.01(95%信頼区間 1.63-2.47)と有意に高い結果となりました。このことは、フレイル高齢者が緊急事態宣言による交流制限で、食生活に影響を受けやすかった…

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