高齢者のためのレジスタンストレーニング 2 -握力は「老化のバイオマーカー」-

握力は「老化のバイオマーカー」サルコペニア,フレイルに代表される老年疾患や老年症候群の予防,あるいは脱却のために,レジスタンストレーニングは最も重要な戦略の一つと考えられています.そこで,高齢者のレジスタンストレーニングについて2019年にJ Strength Cond Res. に掲載されたResistance Training for Older Adults: Position Statement From the National Strength and Conditioning Association. J Strength Cond Res. 2019について,重要論文をご紹介しながらを紐解いていきます. このPosition StatementのIntroductionでは,大きく分けて主に以下の2つに言及しています. ① 骨格筋量・筋力の加齢に伴う影響② 加齢や廃用の影響に対抗するためのレジスタンストレーニング 「① 骨格筋量・筋力の加齢に伴う影響」では,握力(筋力低下)を「老化のバイオマーカー」と表現し,臨床的観点からは骨格筋量減少より重視する必要性をダイレクトに記載しています.その理由として,加齢に伴う筋力の低下率は骨格筋量減少よりも大きいこと,骨格筋量減少はdisabilityの原因となるが,多くは筋力低下を介して起こることを挙げています. 関連して,骨格筋量低下が負の健康アウトカムに影響しないとの報告が散見されるのに対し,筋力低下は負の健康アウトカムの強力な予…

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ポリファーマシー(10)

自身の不適切処方の見つけ方:処方確認 処方確認は「カルテからの情報、患者からの情報、他病院からの情報、患者以外の情報提供者からの報から得られた薬物リストを比較することによって、患者が摂取している最も正確な薬物リストを特定する過程」と定義されます。 必要なのに処方されていない薬物、重複処方されている薬物、用量が適切でない薬物、相互作用している薬物などの処方エラーを避けるために実施されます。次の5つのステップがあります。 現在使用している薬物リストの作成。処方されている薬物リストの作成。1と2の薬物リストを比較。臨床的に適切な薬物リストを作成。新しい薬物リストを患者に明らかにする。 ホームページ国立長寿医療センター老年内科HP 1国立長寿医療センター老年内科HP 2

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近年増加している銅欠乏症

銅(Cu)は生体内に約80mg 存在している微量必須ミネラルであり、その50%は筋肉や骨、10%は肝臓中に分布しています。銅の役割としては、たんぱく質と結合しさまざまな生体内反応の触媒作用の役割を担っています。銅が欠乏すると、貧血や疲労のほか、痺れやふらつきといった精神神経症候などが起こることが知られています。 愛知医科大学内科学講座血液内科の高見昭良教授、内野かおり氏らは、銅欠乏症は近年増加傾向にありこの5年で銅欠乏症症例が3倍に増加していると指摘し、その要因として日本では胃切除症例、胃瘻・腸瘻患者が多いこと、亜鉛製剤の使用が増加していることを挙げています。 銅と亜鉛は同じ吸収経路であり、亜鉛が腸管に到達すると、メタロチオネインという重金属と結合する蛋白質が亜鉛と結合し、銅吸収阻害を誘導することが知られています。そのため、亜鉛摂取が銅吸収を間接的に抑制してしまうのです。 内野氏の論文では、銅欠乏症は予想よりも一般的に見られ、骨髄異形成症候群との鑑別が困難であり、亜鉛サプリメントまたは長期の経腸栄養や中心静脈栄養を伴う血球減少症患者においては銅欠乏症を考慮し、血清銅濃度を測定することが重要であると結論づけています。 銅は多くの食品に含まれており、特にレバーやココアに多く含まれています。また医療用経腸栄養剤のエネーボ®やエンシュア・リキッド®にも含まれています。 銅欠乏症に対して微量元素輸液製剤だけで銅を補うことは難しいため、食事や医療用経腸栄養剤と組み合わせて補充するのがよいでし…

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スタチン治療と糖尿病進行との関連

スタチン治療は、インスリン抵抗性の増加と関連しているが、糖尿病患者の糖尿病コントロールに対するその臨床的意味合いは不明です。Ishak A Mansiらは、糖尿病患者におけるスタチン使用開始後の糖尿病の進行を評価しました。 30歳以上で、研究期間中に糖尿病と診断され、退役軍人省の医療システムを定期的に利用しており、人口統計学的情報、バイタルサイン、検査データ、および薬剤使用などの記録がある人を対象としました。介入方法 スタチン系薬剤による治療開始(スタチン系薬剤使用者)またはH2遮断薬またはプロトンポンプ阻害薬による治療開始(アクティブコンパレータ)。糖尿病の進行は、スタチン使用者では55.9%、比較対照群では48.0%に認められました(オッズ比1.37、95%CI、1.35-1.40、P < 0.001)。二次解析では,低比重リポ蛋白コレステロールの低下強度が高いほど,糖尿病の進行度が高くなるという用量反応関係が示されました。 この研究では,スタチンの使用は,インスリン治療開始の可能性の増加,著しい高血糖,急性血糖合併症,血糖降下薬クラスの処方数の増加など,糖尿病の進行と関連していました。 糖尿病患者におけるスタチン使用のリスク・ベネフィットは、その代謝への影響を考慮したものでなければならないと著者らは結論づけています。 文献Mansi et al. Association of Statin Therapy Initiation With Diabetes Progres…

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日本食は健康に良いのでしょうか?パートⅦ

複数回に渡って日本食パターンの有効性について紹介してきました。今回は、日本食パターンの食習慣が改善することのメリットを紹介したいと思います。 Luらは、日本食の遵守の変化と認知症の発症リスクとの関連性を調査しました。1994年と2006年に大崎市に住む地域在住の高齢者14,336人を対象にしました。日本食の遵守はJapanese Diet Index (JDI8)を用いて評価しました。JDI 8の変化をもとに「大幅な減少」、「中程度の減少」、「変化なし」、「中程度の増加」、「大幅な増加」の5つのグループに分類しました。 参加者のうち231例に認知症が発症しました。JDI8が大幅に減少した場合、認知症発生のハザード比 (95%信頼区間)は1.72 (1.13-2.62)、大幅な増加した場合ではハザード比(95%信頼区間)0.62 (0.38-1.02)でした。著者らは日本食の遵守増加は認知症発症リスクの低下と関連し、日本食の遵守減少は認知症リスクの上昇と関連していたと結論づけていました。 Lu Y, Matsuyama S, Sugawara Y, Sone T, Tsuji I. Changes in a specific dietary pattern and incident dementia: A prospective cohort study. Clin Nutr. 2021 May;40(5):3495-3502. doi: 10.1016/j.clnu.2020.11.03…

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